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新素材開発ストーリー

クラレの独創的で高度な技術が生みだした素材開発物語。

新素材開発ストーリー

アルカリ乾電池用セパレータ開発の歴史

クラレの製造・販売するポリビニルアルコール繊維ビニロンは国産初の合成繊維として1939年に産声を上げました。ビニロンは ≪1≫耐アルカリ性に優れる ≪2≫親水性が高い ≪3≫比較的強度が高い ≪4≫耐候性に優れる という特長を有した繊維です。これらの特長から補強用途(セメント、ゴム)、資材用途(農水産)を中心に利用されています。

原料資材第一部 第一課では製紙用途および乾式不織布用途に、短く切断したビニロンを原料販売しております。一方で製紙用途では原料販売に留まらず、自社で紙を設計する機能を有しており、電池メーカーの要望に合わせて設計したビニロン紙をアルカリ乾電池用セパレータとして販売しております。

アルカリ乾電池の歴史

アルカリ乾電池は使用機器にもよりますがマンガン乾電池に対して約1.5~10倍の長寿命であり廉価でどこでも購入できる利便性の高い電池です。国内では1963年から製造が開始され、その後大きな電力を必要とする機器が増えるにつれ世の中に広まりました。アルカリ乾電池は電解液に強いアルカリ性の水酸化カリウム水溶液を使用しますので、耐アルカリ性に優れ且つ電解液との馴染みの良いビニロンのセパレータが主流でした。

代表的な機器として1979年に発売された携帯音楽プレーヤーや、子供達の間で1988年から1999年までに2度のブームを巻き起こした小型モーターを搭載した四輪駆動の模型が挙げられ、これらの登場により急速に世界市場が拡大しました。それに伴いクラレのビニロンおよびアルカリ乾電池用セパレータの販売量も拡大しております。

アルカリ乾電池用セパレータ開発の転機

アルカリ乾電池が登場してから1991年までは負極である亜鉛粉末に数%もの水銀が添加されていました。これはアルカリ乾電池が水系の電解液を使用した電池であり負極亜鉛が自己溶解することで水素ガスが発生するのを防止するためでした。水銀は亜鉛表面とアマルガムと呼ばれる合金をつくり亜鉛を溶け難くする効果があったからです。しかし、人体に有害な水銀を1992年までにゼロにする事が決まり、その数年前から亜鉛への水銀添加量が削減されていきました。水銀使用量が多い頃のセパレータに使用していたビニロンの繊維径は標準的な太さでも十分なセパレート効果があり電池のショートや異常放電は起こりませんでしたが、水銀添加量が減少するにつれてショート等の異常放電が確認されるようになりました。原因は電池反応で生成する酸化亜鉛の針状結晶にあることがわかりました。この結晶は導電性があるので一定以上の大きさになると結晶同士が連なって正負極間を繋ぎショートするのです。結晶の到達確率を低減する方策としてより細いビニロンを使用したセパレータを提供したところ異常放電を防止する効果が認められました。これはビニロンの細繊度化によりセパレータ一定面積あたりの繊維本数が25%増えたことによる効果と確認されました。その後も水銀添加量が段階的に減らされ、さらにビニロンを細くすることで対応できました。

ところが「水銀0%」の電池ではビニロンの改良だけでは異常放電を止めることが出来ず、発想を転換して自社素材に拘らずに素材を探索することになりました。多数の素材を検討した結果辿り付いたのは微細化したセルロース繊維でした。微細なセルロース繊維を配合することでセパレータの空隙を細分化すると共に電解液を保持する力も強くなりました。結果として異常放電も止まり「水銀0%」に対応することが出来たのです。自社素材のみに拘らず最適な組み合わせを見出すことの大切さを学びました。

アルカリ乾電池の高性能化への取組み

無水銀化以降は新しく発売される消費電力の大きな機器に対応すべく電池メーカー各社で電池の高性能化競争が始まりました。セパレータは正負極を隔離するのが本来の役目ですので電池反応そのものには寄与しません。従い薄くて強いセパレータが出来れば正負活物質の充填量を増やすことが出来て電池性能を大きく向上することが出来ます。我々に次に課せられた課題は、セパレータを薄くすることでした。鋭意検討しセパレータの設計を最適化することで、1992年の無水銀化時点対比で電池設計にもよりますが現時点では25~50%も薄くすることに成功しています。現在でも電池の性能競争は世界で続いており我々への要求も更に高度化してくると考えておりますが、生産・販売・開発が三位一体となって顧客要望に迅速に応えていきたいと考えております。